鉛筆について、石井研堂の『増訂明治事物起原』(春陽堂)によると「明治六年填国博覧会に出張せし、井口直樹の発意灘を以って始めとす」とあります。
これによって、明治7年に日本製の鉛筆がつくられたことがわかります。
前田愛は『明治メディア考』(加藤秀俊と共著)の中で、
「明治の作家の原稿は圧倒的に毛筆ですね。なかにはハイカラな人もいて鉛筆で書いてる人もいます。木村荘八の回想ですが、その姉にあたる明治20年代はじめの女流作家、木村曙が『婦女の鏡』(明治22年)を鉛筆で書いていたそうです。これあたりが鉛筆書きの原稿としては早いものかもしれません。鴎外もよく鉛筆で書いています」
と述べています。
ところで、鉛筆を、削らずにさらに長時間、筆記できるように改良したのが「シャープペンシル」です。
しかし、コンラッド・ゲスナーが16世紀に記述している鉛筆は筒状の軸に鉛を挟んで使うタイプのものです。
したがって、鉛筆・の発明の歴史はかなり古くからシャープペンシルの発明と重なっていたと見てもいいかもしれません。
とはいえ、シャープペンシルという新しい筆記具としてあらためて発明されたのは、19世紀前半のアメリカにおいてでした。
「エヴァーシャープ」(いつもシャープ)という商標が使われるようになったといいます。
余談ですが、カール・マルクスが大英博物館の図書室へ日参して経済学の研究をした際に、彼が使っていたのは、シャープペンシルどころか、鉛筆でもなく、つけペンでした。
シャープペンシルがあったらどれほど時間の短縮ができたことでしょうか。